カンパル君の節分

                            作:うえき あやこ







カンパル君とお母さんは今日もケンカ。
なぜって?
カンパル君が今日も頭を洗わないから。

「カンパル!頭を洗いなさい!」
「いや~だよ!!」

「頭がくさくなってるわよ。あークサイクサイ!」
「いいんだよ~」

「そんなクサイ頭をしていたら、オニに連れていかれるから」
「オニなんて来ないよ~」

「今日は節分の日よ。絶対にオニが来るわよ!」
「じゃあちょうどいいや。頭がクサイって、オニも逃げるでしょ」

カンパル君がそう言ってニヤニヤするので
お母さんは「あーもう」とため息をついて諦めた。

    ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

夜になった。

キイイ~とドアの開く音がした。
お父さんが帰ってきたのかな?
でも聞こえたのは「きゃあ~っっ」というお母さんの悲鳴。
玄関にいたのはたくさんの大きなオニ!!

「カンパル!! 豆!! 豆をまいて!!」
お母さんが逃げこんできた。
カンパル君はあわてて用意していた豆をつかんで
オニに向かって投げつけようとした。

ところが!
「クサイクサイ!カンパルの頭がくさいよ~!!」と、
なんと豆の方が逃げてしまったのだ。

「何?クサイ頭だと?クサイ頭は大好きだ~!!」
オニたちは喜んでドスドスと部屋に入り込んできた。

一番大きなオニがぬうっと頭を突き出して言った。
「おれの頭もクサイだろう?だからおまえは仲間だ!
なのにツノがないのはおかしいぞ。おかしいぞ~!!」

「おかしいぞ、おかしいぞ~!!」
他のオニたちも太い恐ろしい声で合唱した。

「よし、お前の頭にも素晴らしいツノをつけてやろう」
恐ろしさに動くこともできないカンパルの頭に
オニの手がにゅうっと伸びてきた。

そこに小さい子供オニが飛び出してきた。
「おい! カンパル早く逃げろ!
僕もツノをつけられたんだ。
ツノをつけられたら、もう家に帰れないぞ!!」
子供オニは泣いていた。
子供オニの頭もプンプンくさい。

その時だ、お風呂場からお母さんが叫んできた。
「カンパル!!早く頭を洗うのよ!!」

そうだ! 頭を洗えばいいんだ!

「おいで!!」
カンパルは子供オニの手をグイとひっぱって
お母さんの待つ風呂場へスーパーダッシュした。

「まてまてまて~ぇっっっ」
オニが追いかけてくる。

お母さんは猛スピードでカンパルの頭を洗った。
じゃばじゃばじゃば どしゃー!!

ついでに子供オニの頭も
ぶしゃぶしゃぶしゃ ごしゃー!!

ころん。ころん。
子供オニの頭からツノが落ちた。

「お~の~れ~ぇぇぇ」オニが怒って風呂場に
重なり入ってきた。

「豆!! 戻ってこーい!!」
カンパルが両手をバッと伸ばすと
逃げていった豆たちが
ビューンバラバラーッと飛んで帰ってきた。

カンパルの手に一杯になった豆を見たとたん

「うわぁぁ豆だぁ~っっ」
「怖い怖い~っっ」
オニたちは次々に玄関から外に逃げ出していった。


「良かったね。良かったね。」
豆たちがニコニコキラキラ跳びはねた。


その夜、カンパル君はサラサラになった
いい匂いの頭をお母さんにぴったりとくっつけて
グッスリ幸せに眠りましたとさ。

みんなの頭は、大丈夫?


<おしまい>